株式譲渡承認請求・株式買取請求

中小企業では、会社の支配権を持っていない少数反対派の株主(反対株主)は、よほど高額・高利回りの配当を受けない限り、株式を持っていてもあまり利益にはなりません。

却って、相続の際に高額の相続税が発生し、実際上はマイナスだということがあります。

そのため、反対株主は、株式譲渡や株式買取請求によって保有株式を換金しようと考えます。

殆どの株式会社では、株式の譲渡制限がされており、取締役会の承認がなければ、株式譲渡ができないことになっています。

株式譲渡制限がされている会社かどうかは、その会社の登記事項証明書によって確認できます。

 

株式譲渡承認の対処法

反対株主から、株式の譲渡承認請求書が送付されて来ました。どのように対処すればよいでしょうか。

会社は、譲渡承認請求書を受け取ってから2週間以内に、承認するかどうかの決定をしてその結果を株主に通知しなければ、譲渡承認したものとみなされます。

したがって、会社が株式譲渡承認をしない場合には、速やかに取締役会を開いて譲渡不承認の決議をし、株主に通知する必要があります。

 

株式買取請求の対処法

株式譲渡承認請求書に、併せて、株式買取請求も記載されていました。どのように対処すればよいのでしょうか。

殆どの反対株主は、単に株式譲渡承認請求をするだけでなく、これと一緒に株式買取請求もしてきます。

株式買取請求がされている場合には、会社が自ら買い取るか、会社が指定する買取人(指定買取人)に買い取らせるかしなければ、やはり譲渡承認したものとみなされてしまいます。

 

買取り決議

会社側で株式を買い取る場合、具体的にはどのような手続を踏めばよいのでしょうか。

会社が譲渡不承認通知をした日から40日以内、指定買取人が買い取る場合には10日以内に、その旨を株主に通知する必要があり、これをしなければ、譲渡承認したものとみなされてしまいます。

そして、会社が買い取る場合には株主総会の特別決議が、指定買取人が買い取る場合には取締役会の決議が必要です。

したがって、まずは速やかに株主総会や取締役会を開かなければなりません。

 

株式対価の供託

会社側で買い取る旨の決議をして、それを株主に通知するだけでよいのででしょうか。

会社又は指定買取人が買取りの通知をする際、簿価純資産を基礎に算定した金額を供託し、供託書を株主に交付しなければなりません。

この供託書の交付がないと、会社側の買取通知は無効ですので、譲渡承認したものとみなされてしまいます。

 

株式売買価格決定の申立て

供託金額が会社側の買取代金額になってしまうのでしょうか。

この供託は、いわば仮払いです。供託金額が買取代金額として高すぎると考える場合には、会社側が買取通知をした日から20日以内に、裁判所に対して株式売買価格決定の申立てをすることができます。

この申立てをしないと、供託金額が会社側の買取代金額になってしまいます。

 

買取代金額の決定

株式売買価格決定の裁判では、株式買取代金額はどのようにして決定されるのでしょうか。

株式価格の評価方法には様々な方式があります。

どの方式を採用するかという点を含め、裁判所が、会社の資産状態その他一切の事情を考慮して裁量で株式売買価格を決定します。

裁判所が採用する株式評価方式は、従来は、純資産方式や配当還元方式という相続税評価の際にも用いられている複数の方式による算定額の平均値を採ることが多かったのですが、平成20年ころから変化の傾向が見られます。

 

その他の注意点

その他、株式買取請求事件において注意すべき点はあるでしょうか。

譲渡承認請求や株式買取請求に対して会社が行う決議や通知のタイムリミットが細かく決められていますし、決議内容や通知書の記載事項も法定されており、不足があると有効な決議や有効な通知になりません。

また、株主総会や取締役会において決議する際、買取請求した株主自身が議決権を行使できるか、買取請求を撤回できるか、供託はどこの供託所でするかというような細かな問題が沢山あります。

したがって、弁護士に相談されることをお勧めします。

 

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