仮差押について

債権回収をするにあたって、相手方の財産を確保しておくことはとても重要です。
勝訴判決をとったとしても、自動的に債権が回収できるわけではありません。
判決後も相手方が判決に沿った支払いをしない場合、判決をとるための裁判とは別に、強制執行手続をとる必要があります。
ただし、強制執行をして債権を回収するためには、相手方が財産を有している必要があり、債権回収の交渉や裁判期間中に、財産を費消してしまうと、事実上債権の回収が困難となってしまうのです。

このような相手方の財産の費消を防ぎ、財産を保全して、回収の実効性を確保するための手続として、「仮差押え」という手続が用意されています。
これは、訴訟提起前に、相手方の財産のうち債権額に相応する財産を自由に処分できなくする手続であり、仮差押えができれば、訴訟提起後、確定判決を得たあとに、仮差押えにかかる財産につきそのまま強制執行をすることができます。

仮差押えの対象は、大きく分けて

①不動産

②動産

③債権

の3種類がありますが、一番多いのは相手方の銀行預金や給与など、債権を仮差押えするケースです。

例えば、銀行預金は銀行名・支店名がわかっていれば仮差押が可能ですし、給与債権は勤務先がわかっていれば可能となります。

仮差押えも裁判所に対し、裁判官の判断を求める手続であり、普通の裁判と何が違うのか疑問に思われる方もいらっしゃるかと思いますので、普通の裁判との違いを少し説明したいと思います。
普通の裁判では、判決にあたって双方の意見や証拠をみて裁判官が判決を下します。

これに対し、仮差押えのほとんどは、債権者側からの意見や証拠のみで裁判官が仮差押決定を出します。
そのため、非常に迅速に手続を終了させることができるのです。
もっとも、仮差押えは債権者からの一方的な申し立てにより行われるため、担保金(事案により異なりますが、概ね債権額の10~30%程度の金額)を裁判所に納めなければなりません。
例えば虚偽の事実の申立てにより仮差押えが行われ、これに基づき債務者が損害を被った場合などに、損害賠償金にあてるための担保金を裁判所に納めておくことが必要なのです。

仮差押えは、財産の保全という意味もありますが、仮とはいえ相手方は押さえられた財産を処分することができなくなりますので、仮差押えをした時点で、相手方から連絡があり、債権の回収ができるというケースもありますので、債権回収においてはとても有意義な制度といえます。

なお、仮差押えと間違いやすい概念として「仮処分」や「仮執行」があります。
まず、仮処分についてですが、債権者が持っている債権の種類が金銭債権の場合に行うのは仮差押えであり、それ以外の債権、例えば建物の明渡請求権を持っている場合に行うのが仮処分となります。
また、仮執行(宣言)は、判決の確定前に強制執行を可能とする制度のことです。
すなわち、判決確定後でなければ強制執行ができないとなると、日本の裁判は三審制で、判決確定までに一定の時間がかかるので、判決の確定までの間、第一審判決の勝訴者の権利が全うされないことになります。
そこで、財産権上の請求権に関する判決については、仮執行宣言を付すことができることとし、この宣言があれば確定前でも強制執行をすることが可能となっています。

 

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