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相続法改正 ~配偶者居住権の創設~

2018-11-05

2018年7月6日、相続に関する民法等の規定(いわゆる相続法)を改正する法律が成立しました。今回の改正は、約40年ぶりの相続法の大きな見直しとなります。

今回の改正により、配偶者居住権が認められることになりました。配偶者居住権というのは、その建物の全部につき、無償で居住できる権利です。被相続人の死亡時にその被相続人の財産であった建物に居住していた配偶者は、遺産分割又は遺言によって、「配偶者居住権」を取得することができます。

たとえば、夫が亡くなり、住居2000万円と預貯金3000万円(合計5000万円)を、妻と子2人で分割することになったとします。法定相続分で分割すると、妻の相続分は半分の2500万円となります。それまで住んでいた住居の所有権を妻が取得すると、妻は住居(2000万円の価値)と500万円の預貯金を取得することになります。そうすると、住む場所は確保できますが、生活費が不足しそうです。しかし、配偶者居住権の創設により、住居の権利を配偶者居住権1000万円と負担付所有権1000万円に分けて考えることができます(配偶者居住権の評価はケースバイケースです。)。これにより、妻は、配偶者居住権1000万円と預貯金1500万円を相続でき、安心して暮らせる住居と生活費を取得することができるようになります。

日本版司法取引が始まりました

2018-06-29

いわゆる日本版司法取引が平成30年6月1日からスタートしました。

日本版司法取引は、被疑者や被告人が、特定の犯罪において中心的な役割を担った第三者の犯罪を明らかにするため、検察官等に対し、真実に合致する供述をしたり証拠を提出するという協力行為の見返りに、自分の起訴を見送ってもらったり、起訴された場合でも軽い求刑をしてもらったりできるようにする仕組みのことです。

①特定の犯罪に限定されていること、②「他人」の刑事事件の捜査・公判に協力すること、③協議・合意の過程に弁護人の立会いが義務化されていることが特徴といえます。

刑法の贈収賄や組織犯罪処罰法の組織的詐欺などに加え、独占禁止法違反(談合)や脱税など経済関係の法律の罪が対象となります。

いわゆる「司法取引」には、被疑者あるいは被告人が、①有罪を認める見返りに刑の減軽や免責を受ける「自己負罪型」と、②訴追機関に他人の犯罪を明らかにするための協力をする見返りに刑の減軽や免責を受ける「訴追協力型」があるとされますが、日本版司法取引は、「自己負罪型」ではなく、「訴追協力型」のみとなります。

社内や取引先などで違法行為があった場合、企業は事実関係を把握して、司法取引に応じるべきかなどを判断する必要があります。司法取引を持ちかけられた場合、どう把握し対応するか等事前に検討しておくことが必要です。

検索結果の削除についての最高裁決定

2017-02-06

平成29年1月31日、過去に逮捕歴のある男性が検索サイト「google」に表示される検索結果の削除を求めた裁判で、最高裁が、削除を認めない決定を出しました。

この決定は、最高裁が初めて検索結果の削除についての一応の判断基準を示したものとして注目されました。今回は、この最高裁の決定についてみていきたいと思います。

 このケースは、過去に罰金刑を受けた男性が、事件後3年を経過してもまだ名前と住所で検索すると、犯罪に関する記事が表示されるとして、さいたま地方裁判所に対し、検索結果の削除を求める仮処分を申し立てた事案です。

 さいたま地裁では、平成27年12月に「一度は逮捕歴を報道され社会に知られてしまった犯罪者といえども、人格権として私生活を尊重されるべき権利を有し、更生を妨げられない利益を有するのであるから、犯罪の性質等にもよるが、ある程度の期間が経過した後は過去の犯罪を社会から『忘れられる権利』を有するというべきである」等として、該当記事の削除を認めました。

 これに対し、google側が東京高等裁判所に抗告をしました。東京高等裁判所では、本件犯行を知られること自体が回復不可能な損害であるとしても、そのことにより直ちに受忍限度を超える重大な支障が生じるとは認められないこと等を考慮すると、表現の自由及び知る権利の保護が優越するというべきと判示し、記事の削除を認めませんでした。また「忘れられる権利」は名誉権やプライバシー権に基づく差し止め請求と同じものであり、忘れられる権利として独立して判断する必要がないとも指摘しました。

 そして、平成29年1月31日、最高裁は、①表示された事実の性質・内容、②プライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度、③その者の社会的地位や影響力、④記事の目的や意義、⑤記事が掲載された時の社会的状況とその後の変化、⑥事実を掲載する必要性など、事実を公表されない法的利益と情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量し、事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には、検索事業者に対し、情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当であるとの判断を示しました。その上で、児童買春が社会的に強い非難の対象であり、今なお公共の利害に関する事項である等として、検索結果の削除を認めない決定をしました。

 現在、インターネット上の情報の複製と頒布は非常に容易であり、多数のウェブページに個人の名誉を侵害し、あるいはプライバシーを暴露する記載がされると、個々のウェブページ管理者に対する削除請求をすることは、極めて困難です。そのような場合、名誉ないしプライバシーの実効的な保護のためには、検索サービスによる検索結果に表示されないようにする措置をとらざるを得ない場合があることは否定できません。今回の最高裁決定は、検索結果からの削除の判断にあたっての考慮要素を示しました。しかし、明確な判断基準が示されたとはいえず、検索結果の削除の判断基準の形成については、今後一層の事例の集積が待たれるところです。